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老健法による子宮癌施設検診の成績

長崎県佐世保市
<目次>
はじめに ・ 検診体制 ・ 検診受診者数 ・ 細胞診成績 ・要精検者数及び要精検率 
年齢別要精検者数及び要精検率子宮癌検診結果 ・ 子宮頚癌の期別分類 
子宮頚癌の年齢別期別分類 ・ 追跡調査 ・まとめ

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【 はじめに 】

この論文は、佐世保共済病院前院長木寺義郎先生の指導の下、平成21年に引退されました細胞検査士五反田照三氏がまとめられていたものを、(株)ラボテックの高崎唯博前田明が引き継いで報告するものである。

佐世保市における子宮癌検診は、従来から佐世保市立総合病院と佐世保共済病院で実施されてきたが、昭和582月老人保健法の施行と共に、昭和6071日からは、登録指定医施設検診も実施されるようになった。
老人保健法による子宮癌検診は30才以上の婦人を対象として行なわれてきた。
佐世保市では、老人保健法による子宮癌検診の個人負担金は、長年、20才〜29才は2900円、30才〜69才は1000円、70才以上は無料となっていた。但し60才〜69才で佐世保市の国民健康保険加入者は無料であった。
このため、29才以下の検診受診者については、多くの産婦人科医が、必要な場合保険適応で子宮癌検査をしていた。
しかし、子宮癌発生の低年齢化のため、平成18年より、20才〜69才は1000円、70才以上は無料となった。さらに、佐世保市の国民健康保険加入者は無料となった。
そのため、29才以下の婦人の老健法による子宮癌検診が急増することになった。
また、以前は細胞診の結果がパパニコロー分類で報告されていたが、平成24年以降、べセスダ分類が使われるようになり、統計上結果が見えにくなった。これも時代の変化でしょうか。
この検診体制がスタートして平成281231日で31年(316ヶ月)が経過したので、この間の検診成績について報告する。


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【 検診体制 】

1. 検診対象は原則として佐世保市に居住する20才以上の婦人である。
2. 検体は、各産婦人科開業施設で子宮膣部より直接塗抹で採取、アルコールで固定されたものを2つの検査センターがそれぞれの施設を廻って集め、染色標本を作製し、細胞検査士へ届けられる。2つの検査センターは、平成1 3年2月統合合併、(株)ラボテックとして検査業務を継続している。
3. 標本は、すべて細胞検査士が問診票を参考にダブルチェックで鏡検し、パパニコロー分類、平成24年からはべセスダ分類で報告する。
4. 陽性、疑陽性の標本は、学会認定細胞診指導医へ送付、指導医は再鏡検し、陽性者及び疑陽性者を決定報告する。
5. 陽性者ならびに疑陽性者の精密検査は原則として2次精密検査指定病院<佐世保市総合医療センター(旧佐世保市立総合病院)、佐世保共済病院>で行うこととなっている。

6.

細胞検査士は、発足当時3施設5名で鏡検を行ってきたが、その後6施設10名で実施してきた。現在は、(株)ラボテックの細胞検査士が主体となって実施している。


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【 検診受診者数 】


これまでの受診者数は下記表の示すとおりです。平成28年末で173770名である。
最近6年間は、9000名前後の受診者数で推移していたが、平成28年は8017名とやや少なかった。。
平成18年より、29歳以下の受診者層が増加し、20〜30歳代が半数を超えている。これは個人負担金の変更がおおいに関係しているものと思われる。

年齢別  ≦29 30〜39 40〜49 50〜59 60〜69 70≦
S60 28 286 274 205 72 21 886
61 89 1146 942 537 176 78 2968
62 84 1620 1239 755 282 111 4091
63 53 1633 1274 690 276 107 4033
H 1 33 1682 1406 696 274 112 4203
2 14 1773 1567 768 290 125 4537
3 13 2065 1839 899 337 106 5259
4 8 1635 1556 807 344 143 4493
5 7 1682 1641 873 354 170 4727
6 6 1628 1536 816 384 133 4503
7 9 1611 1578 897 429 148 4672
8 11 1435 1584 863 433 178 4504
9 8 1392 1406 818 399 195 4218
10 13 1354 1320 834 385 178 4084
11 41 1395 1187 844 414 181 4062
12 16 1338 1151 805 379 189 3878
13 10 1614 1196 898 422 195 4335
14 2 1520 1072 836 377 190 3997
15 2 1670 1129 842 416 247 4306
16 0 1515 949 773 397 252 3886
17 4 1690 1140 819 469 296 4418
18 1146 1738 1072 895 470 323 5644
19 1528 1816 1101 915 527 317 6204
20 1554 1756 1142 890 559 332 6233
21 1947 2317 1413 1047 725 378 7827
22 2326 2925 1719 1113 779 378 9240
23 2160 2910 1626 1099 789 412 8996
24 2059 2743 1625 1047 815 438 8727
25 2062 2681 1620 1039 819 411 8632
26 2047 2985 1670 1002 799 449 8952
27 2005 3116 1817 1032 808 460 9238
28 1697 2317 1682 1001 821 499 8017
合計 20982 58988 43473 27355 15220 77752 0173770
(%) 12.1% 33.9% 25.0% 15.7% 8.8% 4.5% 100.0%


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【 細胞診成績 】

 一次検診の細胞診成績は下記のとうりです。
平成23年度まではパパニコロー分類で分類されてきましたが、平成24年度はパパニコロー分類とべセスダ分類の併用となり、
平成25年度4月以降はべセスダ分類を使用することになったため、表の表記が分かりにくなりました。

クラス T U NILM ASC−US ASC-H Va LSIL Vb HSIL(中) HSIL(高) HSIL W X SCC AGC AIS Adeno 他悪性 その他A その他B 不適
H60 779 85 0 0 0 17 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0 0 1 886
61 2511 370 0 0 0 70 0 7 0 0 0 5 4 0 0 0 0 0 0 0 1 2968
62 3555 424 0 0 0 91 0 7 0 0 0 5 8 0 0 0 0 0 0 0 1 4091
63 3599 317 0 0 0 100 0 5 0 0 0 2 7 0 0 0 0 0 0 0 3 4033
H 1 3779 337 0 0 0 70 0 5 0 0 0 4 7 0 0 0 0 0 0 0 1 4203
2 3965 432 0 0 0 101 0 12 0 0 0 13 12 0 0 0 0 0 0 0 2 4537
3 4686 448 0 0 0 96 0 12 0 0 0 7 5 0 0 0 0 0 0 0 5 5259
4 3989 382 0 0 0 94 0 10 0 0 0 7 3 0 0 0 0 0 0 0 8 4493
5 4088 548 0 0 0 78 0 7 0 0 0 2 1 0 0 0 0 0 0 0 3 4727
6 3886 525 0 0 0 73 0 8 0 0 0 4 4 0 0 0 0 0 0 0 3 4503
7 4049 556 0 0 0 49 0 7 0 0 0 1 7 0 0 0 0 0 0 0 3 4672
8 3881 542 0 0 0 66 0 5 0 0 0 2 3 0 0 0 0 0 0 0 5 4504
9 3450 678 0 0 0 69 0 7 0 0 0 2 7 0 0 0 0 0 0 0 5 4218
10 3395 601 0 0 0 72 0 6 0 0 0 3 1 0 0 0 0 0 0 0 6 4084
11 3465 520 0 0 0 61 0 11 0 0 0 2 2 0 0 0 0 0 0 0 1 4062
12 3181 600 0 0 0 83 0 5 0 0 0 5 3 0 0 0 0 0 0 0 1 3878
13 3629 594 0 0 0 96 0 5 0 0 0 5 6 0 0 0 0 0 0 0 0 4335
14 3556 366 0 0 0 66 0 5 0 0 0 2 2 0 0 0 0 0 0 0 0 3997
15 3502 699 0 0 0 91 0 8 0 0 0 3 3 0 0 0 0 0 0 0 0 4306
16 3286 523 0 0 0 65 0 6 0 0 0 4 2 0 0 0 0 0 0 0 0 3886
17 3834 491 0 0 0 83 0 4 0 0 0 4 2 0 0 0 0 0 0 0 0 4418
18 4498 1004 0 0 0 133 0 3 0 0 0 3 2 0 0 0 0 0 0 0 1 5644
19 5246 854 0 0 0 98 0 4 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 6204
20 5559 557 0 0 0 106 0 8 0 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 6233
21 6899 808 0 0 0 114 0 4 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 7827
22 8200 837 0 0 0 182 0 12 0 0 0 2 4 0 0 0 0 0 0 0 3 9240
23 8090 735 0 0 0 149 0 7 0 0 0 0 6 0 0 0 0 0 0 0 9 8996
24 8047 514 0 56 0 0 56 0 17 17 0 1 4 0 0 0 0 0 3 0 12 8727
併用期 2336 93 0 52 0 0 76 0 5 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 19 2582
25 0 0 6031 4 0 0 0 0 0 10 0 0 3 2 0 0 0 0 0 6050
26 0 0 8729 77 3 0 90 0 0 0 35 0 0 7 2 0 1 0 3 0 8 8952
27 0 0 9028 77 3 0 89 0 0 0 35 0 0 5 0 0 1 0 0 0 0 9238
28 7818 98 8 58 21 3 5 1 0 0 0 0 5 8017
122940 15440 31606 360 18 2373 369 180 22 18 101 90 114 18 9 1 2 0 3 0 106 173770
70.75% 8.89% 18.19% 0.21% 0.01% 1.37% 0.21% 0.10% 0.01% 0.01% 0.06% 0.05% 0.07% 0.01% 0.01% 0.00% 0.00% 0.00% 0.00% 0.00% 0.06% 100.00%
※※ 平成24年度は日母分類とべセスダ分類の併用
※※ 平成25年度4月以降はべセスダ分類を使用
※ 平成24年度 その他A:Vb、ASC-H、AGC


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【 要精検者数及び要精検率 】

 受診者総数173770名中、細胞診でクラスIIIaまたはASC-US 以上の要精検者は約3,500人 (2.05%)であった。
 年別では、平成2年の3.04%が最も高く、平成7年の1.37%が最も低かった。


受診者数 要精検者数 要精検率(%)
S60 886 21 2.37
61 2968 86 2.90
62 4091 111 2.71
63 4033 114 2.83
H 1 4203 86 2.05
2 4537 138 3.04
3 5259 120 2.28
4 4493 114 2.54
5 4727 88 1.86
6 4503 89 1.98
7 4672 64 1.37
8 4504 76 1.69
9 4218 85 2.02
10 4084 82 2.01
11 4062 76 1.87
12 3878 96 2.48
13 4335 112 2.58
14 3997 75 1.88
15 4306 105 2.44
16 3886 77 1.98
17 4418 93 2.11
18 5644 141 2.50
19 6204 104 1.68
20 6233 117 1.88
21 7827 120 1.53
22 9240 200 2.16
23 8996 162 1.89
24 8727 154 1.76
25 8632 153 1.77
26 8952 215 2.40
27 9238 210 2.27
28 8017 194 2.42
173770 3567 2.05%


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【 年齢別要精検者数及び要精検率 】

 要精検率ですが、29歳以下647名(3.08%)が最も高く年齢とともに減少傾向にあるが、70歳以上で132名(1.70%)と高くなっている。

年  齢 受診者数 受診率(%) 要精検者数 要精検率
≦29 20982 12.07% 647 3.08%
30〜39 58988 33.95% 1481 2.51%
40〜49 43473 25.02% 918 2.11%
50〜59 27355 15.74% 353 1.29%
60〜69 15220 8.76% 147 0.97%
70≦ 7752 4.46% 132 1.70%
173770 100.00% 3678 1.94%

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【 子宮癌検診結果 】

表は、子宮癌検診結果をまとめたものである。受診者総数は 173770名、この中で最終的に腫瘍性病変と診断されたものは562名、発見率は0.35%であった。
H28年度においては体癌と診断された症例が増加傾向にあった。

年 別 受診者数 癌発見数 癌発見率(%) 上皮内癌 浸潤癌 腺癌 腺扁平上皮癌 体癌
昭和 60 886 5 0.56% 1 4 0 0 0
61 2968 19 0.64% 9 9 1 0 0
62 4091 21 0.51% 12 7 2 0 0
63 4033 14 0.35% 4 7 1 0 2
平成元年 4203 13 0.31% 6 6 0 0 1
2 4537 26 0.57% 14 8 1 0 3
3 5259 14 0.27% 6 6 0 0 2
4 4493 17 0.38% 8 7 0 0 2
5 4727 7 0.15% 1 5 0 0 1
6 4503 15 0.33% 9 6 0 0 0
7 4672 15 0.32% 4 8 0 0 3
8 4504 10 0.22% 2 5 3 0 0
9 4218 17 0.40% 8 8 1 0 0
10 4084 7 0.17% 2 5 0 0 0
11 4062 16 0.39% 10 4 2 0 0
12 3878 18 0.46% 7 5 2 0 4
13 4335 21 0.48% 8 13 0 0 0
14 3997 9 0.23% 3 5 0 0 1
15 4306 12 0.28% 3 6 2 0 1
16 3886 12 0.31% 6 5 1 0 0
17 4418 8 0.18% 4 4 0 0 0
18 5644 10 0.18% 2 5 2 1 0
19 6204 9 0.15% 3 4 0 0 2
20 6233 10 0.16% 4 5 0 0 1
21 7827 14 0.18% 6 7 0 0 1
22 9240 19 0.21% 9 6 2 0 2
23 8996 18 0.20% 8 8 1 0 1
24 8727 23 0.26% 10 10 2 0 1
25 8632 43 0.50% 34 6 1 0 2
26 8952 67 0.75% 49 13 1 1 3
27 9238 50 0.54% 39 7 1 0 3
28 8017 48 0.60% 25 12 2 0 9
173770 607 0.35% 316 216 28 2 45
- 子宮頚部腫瘍性病変計:562名 体癌計:45名
 ※25年度以降は上皮内癌の項目にCIN3を含む



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【 子宮頚癌の期別分類 】

子宮頸癌の進行期別分類では、下記表に示しますように頸癌症例 561例中0期:318名(56.7%)、Ta期 :114名(20.3%)、Tb期 :39名(7.0%)、Ua期:16名(2.9%)Ub期以上 28名(5.0%)、腺癌24名(4.3%)であった。
0期、Ta 期を合わせた初期癌の発見率は 77.0%と高く検診の成果がうかがわれる。

クラス 0 期 Ta 期 Tb 期 Ua 期 Ub期以上 腺癌 腺扁平 期不明
S60 1 3 1 0 0 0 0 0 5
61 9 2 3 0 4 1 0 0 19
62 12 3 1 2 1 2 0 0 21
63 4 3 1 2 1 1 0 0 12
H 1 6 4 1 0 1 0 0 0 12
2 14 4 2 0 2 1 0 0 23
3 6 3 1 1 1 0 0 0 12
4 8 5 1 0 1 0 0 0 15
5 1 3 1 1 0 0 0 0 6
6 9 1 1 2 2 0 0 0 15
7 4 4 3 1 0 0 0 0 12
8 2 3 1 1 0 3 0 0 10
9 8 3 1 2 2 1 0 0 17
10 2 2 2 0 1 0 0 0 7
11 10 1 2 0 1 2 0 0 16
12 7 3 1 0 1 2 0 0 14
13 8 7 1 3 2 0 0 0 21
14 3 4 1 0 0 0 0 0 8
15 3 5 1 0 0 2 0 0 11
16 6 3 2 0 0 1 0 0 12
17 4 0 2 0 2 0 0 0 8
18 2 4 1 0 0 2 1 0 10
19 3 2 0 1 1 0 0 0 7
20 3 4 1 0 1 0 0 0 9
21 6 5 2 0 0 0 0 0 13
22 9 3 3 0 0 2 0 0 17
23 8 6 1 0 1 1 0 0 17
24 10 6 1 0 3 2 0 0 22
25 31 4 0 0 0 1 0 2 38
26 48 4 0 0 0 0 1 9 62
27 47 4 0 0 0 0 0 3 54
28 24 6 0 0 0 0 0 6 36
合計 318 114 39 16 28 24 2 20  561
※ 25年度より0期分類にCIN3を含む(高度異形成と併記されたものは除外)


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【 子宮頚癌の年齢別期別分類 】

 年齢別期別分類から30歳代の早期頚部がんの検出が多いことがわかり、年齢層が高くなるにつれて進行がんが検出されている。


年齢 0 期 Ta 期 Tb 期 Ua 期 Ub期以上 SCC期不明 腺癌 腺扁平
≦29 40 5 1 0 1 0 0 0 47
30〜39 143 52 11 1 2 4 6 0 219
40〜49 51 28 8 1 1 1 9 0 99
50〜59 15 8 4 1 7 2 3 0 40
60〜69 11 10 5 5 3 1 2 1 38
70≦ 1 7 9 8 18 1 3 0 55
261 110 38 16 32 9 23 1 498
(%) 52.41% 22.09% 7.63% 3.21% 6.43% 1.81% 4.62% 0.20%  100%



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【 追跡調査 】



佐世保市における子宮癌施設検診の二次精密医療機関は、佐世保市立総合病院と佐世保共済病院の2施設となっているが、2施設に佐世保中央病院を加え当社に病理検査を依頼され自施設での精密検査も行われている。
一次検診での要精検者の追跡結果を下表に表します。
なお平成24年・25年度の3月末までは日母分類とべセスダ分類を併用しており平成23年以前の統計とは切り離して表記しております。


<昭和60年〜平成23年> 27年間  受診者数:130204名  要精検者数:2641名(2.03%)  追跡不明者:384名(14.5%)

◎ クラスVa 2319 例 追跡不明者 363 例( 15.65 %) <昭和60年〜平成23年>

2319例中組織診による検査が行われたのが 792例(34.15%)であり内訳は異形性: 454例(19.58%)、上皮内癌: 74例(3.19%)、浸潤癌: 32例(1.38%)子宮頸部腺癌: 5例(0.22%)、子宮体癌10例(0.43%)、肉腫: 1例(0.04%)卵管癌: 1例(0.04%)など悪性と診断されたものは123例(5.30%)であった。一方、慢性子宮頸管炎などの炎症性疾患は215例(9.27%)であった。細胞診のみによる再検査では、Va から Vb へ変わったものが11例(0.47%)長期間 Va が続いたものは400例(17.25%)、Va から U、Tの陰性となったものは122例(5.26%)、再検査で U、Tの陰性であったものは 631例(27.21%)であった。 Va での追跡不明者は363例(15.65%)となっている。

組織診による精査 病理診断 例数(Va比)
792例
<34.15%>
異形成 454(19.58)
上皮内癌 74( 3.19)
浸潤癌 32( 1.38)
頸部腺癌 5( 0.22)
子宮体癌 10( 0.43)
肉腫 1( 0.01)
卵管癌 1( 0.01)
炎症性疾患 215( 9.27)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(Va比)
1164例
<50.19%>
Va〜Vb 11( 0.47)
長期間Va 400(17.25)
VaからU、T 122( 5.26)
U、T 631(27.21)



◎ クラスVb 179 例 追跡不明者 15 例( 8.38 %) <昭和60年〜平成23年>

179例中組織診による検査が行われたものは 151例(87.79%)、異形性:52例(29.05%)上皮内癌: 46例(25.70%)、浸潤癌: 33例(18.44%)、頸部腺癌: 1例(0.56%)子宮体癌: 5例(2.79%)、卵管癌: 1例(0.56%)がみられた。悪性と診断されたものは86例(48.04%)であった。  炎症性疾患は、17例(9.50%)にみられた。細胞診のみによる再検査は 9例であり成績は表の通りであった。なお、追跡不明者は15例(8.38%)であった。

組織診による精査 病理診断 例数(Vb比)
151例
<87.79%>
異形成 52(29.05)
上皮内癌 46(25.70)
浸潤癌 33(18.44)
頸部腺癌 1( 0.56)
子宮体癌 5( 2.79)
卵管癌 1( 0.56)
炎症性疾患 17( 9.50)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(Vb比)
9例
<5.03%>
長期間Vb 4( 2.23)
VbからU、T 5( 2.79)

平成8年の追跡不明者のうち1例が、平成10年の保険診療で上皮内癌と診断された。


◎クラスIV 88 例 追跡不明者 1 (1.14%) <昭和60年〜平成23年>


88例中87例に組織検査が行われ、異形性: 14例(15.73%)、上皮内癌: 27例(30.34%)浸潤癌: 33例(37.08%)、頸部腺癌: 6例(6.74%)、子宮体癌: 4例(4.49%)がみられた。悪性と診断されたものは、計 71例(80.68%)であった。炎症性疾患は、2例(2.30%)、追跡不明者は、1例(1.14%)であった。

組織診による精査 病理診断 例数(W比)
87例
<97.75%>
異形成 14(15.73)
上皮内癌 27(30.34)
浸潤癌 33(37.08)
頸部腺癌 6( 6.74)
子宮体癌 4( 4.49)
腺扁平上皮癌 1( 1.12)
炎症性疾患 2( 2.30)



◎ クラスX 111 例 追跡不明者 5 例( 4.50 %) <昭和60年〜平成23年>


111例中100例に組織検査が行われ、異形性: 4例(3.60%)、上皮内癌: 10例(9.01%)浸潤癌: 76例(68.47%)、子宮頸部腺癌: 6例(5.41%)、子宮体癌: 8例(7.21%)がみられた。  悪性と診断されたものが、100例(90.1%)であった。炎症性疾患は、2例(1.80%)であった。 なお、追跡不明者は5例(4.50%)となっているが、この中には高齢者と他疾患合併のため治療拒否した例や他県に転居した例なども含まれている。

組織診による精査 病理診断 例数(X比)
106例
<95.50%>
異形成 4( 3.60)
上皮内癌 10( 9.01)
浸潤癌 76(68.47)
頸部腺癌 6( 5.41)
子宮体癌 8( 7.12)
炎症性疾患 2( 1.80)


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<平成24年> 1年間  受診者数:8727名  要精検者数:154名(17.6%)  追跡不明者:37名(24.0%)



◎ 平成24年度 ASC-US 54例  追跡不明者 15名(27.28%) <平成24年>


54例中組織診による精査が行われたものは30例(55.56%)、異形成21例(38.89%)、上皮内癌1例(1.85%)、浸潤癌1例(1.85%)炎症性疾患7例(12.96%)であった。
細胞診のみでの再検査は9例に行われ、NILM6例(11.11%)ASC−US2例(3.70%)LSIL1例(1.85%)であった。

組織診による精査 病理診断 例数(ASC-US比)
30例
<55.56%>
異形成 21(38.89)
上皮内癌 1( 1.85)
浸潤癌 1( 1.85)
頸部腺癌 0( 0.00)
子宮体癌 0( 0.00)
肉腫 0( 0.00)
卵管癌 0( 0.00)
炎症性疾患 7(12.96)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(ASU-US比)
9例
<16.67%>
NILM 6(11.11)
ASC-US 2( 3.70)
LSIL 1( 1.85)


◎ LSIL  56例 追跡不明者 13例(23.21%) <平成24年>


56例中組織診による精査が行われたものは31例(55.36%)、異形成24例(42.86%)、上皮内癌1例(1.79%)、炎症性疾患6例(10.71%)であった。
細胞診のみでの再検査は12例に行われ、NILM4例(7.14%)ASC−US2例(3.57%)LSIL5例(8.93%)HSIL1例(1.79%)であった。


組織診による精査 病理診断 例数(LSIL比)
31例
<55.36%>
異形成 24(42.86)
上皮内癌 1( 1.79)
浸潤癌 0( 0.00)
頸部腺癌 0( 0.00)
子宮体癌 0( 0.00)
卵管癌 0( 0.00)
炎症性疾患 6(10.71)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(LSIL比)
12例
<21.43%>
NILM 4( 7.14)
ASC-US 2( 3.57)
LSIL 5( 8.93)
HSIL 1(1.79)


◎ HSIL(moderate & Severe) 34例 追跡不明者 7名(20.59%) <平成24年>


34例中組織診による精査が行われたものは24例(70.59%)、異形成12例(35.29%)、上皮内癌4例(11.76%)、浸潤癌7例(20.59%)炎症性疾患1例(2.94%)であった。
細胞診のみでの再検査は3例に行われ、NILM1例(2.94%)LSIL1例(2.94%)HSIL1例(2.94%)であった。


組織診による精査 病理診断 例数(HSIL比)
24例
<70.59%>
異形成 12(35.29)
上皮内癌 4(11.76)
浸潤癌 7(20.59)
頸部腺癌 0( 0.00)
子宮体癌 0( 0.00)
腺扁平上皮癌 0( 0.00)
炎症性疾患 1( 2.94)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(LSIL比)
3例
<0.09%>
NILM 1( 2.94)
LSIL 1( 2.94)
HSIL 1( 2.94)


◎ クラスW 1例 追跡不明者 0 <平成24年>

1例中組織診による精査が行われたものは1例(100%)、頚部腺癌1例(100%)であった。


組織診による精査 病理診断 例数(W比)
1例(100%) 頚部腺癌 1(100.00)


◎ クラスX 4例 追跡不明者 0 <平成24年>

4例中組織診による精査が行われたものは4例(100%)、浸潤癌2例(50.00%)、頚部腺癌1例(25.00%)、癌肉腫1例(25.00%)であった。


組織診による精査 病理診断 例数(X比)
4例
(100%)
浸潤癌 2(50.00)
頚部腺癌 1(25.00)
癌肉腫 1(25.00)


◎ その他 3例(Vb、AGC、ASC−H) 追跡不明者 2例(66.67%) <平成24年>

3例中組織診による精査が行われたものは1例(33.33%)、異形成1例(33.33%)、その他2例は追跡不明であった。


組織診による精査 病理診断 例数(その他比)
ASC-H 異形成 1(33.33)


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<平成25年〜平成28年> 4年間  受診者数:34839名  要精検者数:772名(2.22%)  追跡不明者:184名(23.8%)


◎ ASC-US 304例  追跡不明者 120名(39.5%) <平成25年〜平成28年>

304例中組織診による精査が行われたものは155例、CIN1 75例、CIN2 28例、CIN3 27例、AIS 1例、SCC 4例、体部腺癌 2例、炎症性疾患 18例であった。
細胞診のみでの再検査は29例に行われ、NILM 23例、ASC−US 3例、LSIL 1例、ASC-H 2例であった。


組織診による精査 病理診断 例数(ASC-US比)
155例
(51.0%)
CIN 1 75(24.7%)
CIN 2 28( 9.2%)
CIN 3 27( 8.9%)
AIS 1( 0.3%)
SCC 4( 1.3%)
体部腺癌 2( 0.7%)
炎症性疾患 18( 5.9%)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(ASC-US比)
29例
(9.5%)
NILM 23( 7.6%)
ASC-US 3( 1.0%)
LSIL 1( 0.3%)
ASC-H 2( 0.7%)


◎ ASC-H 18例 追跡不明者 2(11.1%) <平成25年〜平成28年>

15例において組織診による精査が行われた。CIN 10例、SCC 2例、炎症性疾患 2例であった。
ASC判定は322例(ASC-US 304例 ASC-H 18例)であり総受診者(3年間34839名)の0.92%にあたり、推奨される5%以下であった。
またASC全体に対するASC−USの割合は90%以上、ASC-Hの割合は10%以下が推奨されるが、当施設においてはASC-US(94.4%)、ASC-H(5.6%)であり推奨値内であった。

組織診による精査 病理診断 例数(ASC-H比)
15例
(83.3%)
CIN 2 1( 5.6%)
CIN 3 9(50.0%)
AIS 1( 5.6%)
SCC 2(11.1%)
炎症性疾患 2(11.1%)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(ASC-H比)
1例 (5.6%) ASC-H0 1( 5.6%)


◎ LSIL  313例  追跡不明者48名(15.3%) <平成25年〜平成28年>

313例中組織診による精査が行われたものは249例、CIN1 102例、CIN2 48例、CIN3 68例、CIS 1例、SCC 3例、炎症性疾患 27例であった。
細胞診のみでの再検査は16例に行われ、NILM 4例、ASC-US 2例、ASC-H 1例、LSIL 9例であった。
LSIL 313例中102例がCIN1であったが次いでCIN3が多い結果となった。

組織診による精査 病理診断 例数(LSIL比)
249例
(79.6%)
CIN 1 102(32.6%)
CIN 2 48(15.3%)
CIN 3 68(21.9%)
CIS 1( 0.3%)
SCC 3( 1.0%)
炎症性疾患 27( 8.6%)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(LSIL比)
16例
(5.1%)
NILM 4( 1.3%)
ASC-US 2( 0.6%)
ASC-H 1( 0.3%)
LSIL 9( 2.9%)


◎ HSIL(moderate & Severe) 107例 追跡不明者 12名(11.2%) <平成25年〜平成28年>

107例中組織診による精査が行われたものは94例、CIN1 13例、CIN2 10例、CIN3 44例、CIS 3例、SCC 16例、腺扁平上皮癌 2例、炎症性疾患 6例であった。
細胞診のみでの再検査は1例で行われ、NILMであった。。


組織診による精査 病理診断 例数(HSIL比)
94例
(87.9%)
CIN 1 13(12.1%)
CIN 2 10( 9.3%)
CIN 3 44(41.1%)
CIS 3( 2.8%)
SCC 16(15.0%)
腺扁平上皮癌 2( 1.9%)
炎症性疾患 6( 3.5%)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(HSIL比)
1例(0.9%) NILM 1( 0.9%)


◎ AGC 10例 追跡不明者 1名(10.0%) <平成25年〜平成28年>

10例中 8例に組織診による精査が行われた。CIN1 3例、CIN3 1例、体部腺癌 4例であった。1例は細胞診のみの再検査でNILMであった。

組織診による精査 病理診断 例数(AGC比)
8例
(80.0%)
CIN 1 3(30.0%)
CIN 3 1(10.0%)
体部腺癌 4(40.0%)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(AGC比)
1例(10.0%) NILM 1(10.0%)


AIS 1例 追跡不明 0例   <平成25年〜平成28年>

織診による精査が行われ、腺癌であった。

組織診による精査 病理診断 例数(AIS比)
1例(100%) 腺癌 1( 100%)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(AIS比)
0例 0 0


SCC 18例 追跡不明 1例(5.6%) <平成25年〜平成28年>

18例中組織診による精査が行われたものは17例であった。SCC 13例  1例は追跡不明であった。

組織診による精査 病理診断 例数(SCC比)
17例(94.4%) CIN 1 1( 5.6%)
CIN 3 2(11.1%)
SCC 13(72.2%)
内膜腺癌 1( 5.6%)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(SCC比)
0例 0 0




<<子宮体部>>

平成25年〜28年の体部受診者中、陽性9例、疑陽性23例が発見された。また診断不適となったものが34件(8.56%)であった。
陽性・疑陽性中9件が組織診断にて悪性腫瘍と判定された。


疑陽性 23例 追跡不明 2例(8.7%)  <平成25年〜平成28年>

組織診による精査 病理診断 例数(疑陽性比)
20例(87.0%) CIN 1 1( 4.3%)
内膜腺癌 6(26.1%)
直腸癌 1( 4.3%)
増殖性疾患 5(21.7%)
良性疾患 7(30.4%)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(疑陽性比)
1例( 4.3%) 陰性 1( 4.3%)


陽性 9例 追跡不明 1例(14.3%) <平成25年〜平成28年>

組織診による精査 病理診断 例数(陽性比)
8例(88.9%) 内膜腺癌. 6(66.7%)
漿液性腺癌 1(11.1%)
増殖性疾患 1(11.1%)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(陽性比)
0例 0 0

 診断不適 14例 追跡不明 9例(64.3%) <平成25年〜平成28年>


組織診による精査 病理診断 例数(SCC比)
4例(28.6%) 内膜腺癌 1( 7.1%)
良性疾患 3(21.4%)
細胞診のみ再検査 クラス別成績 例数(SCC比)
1例 陰性0 01( 7.1%)









 要精検者合計3,567 例中追跡不明者計 608 例(17.0%)



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【 まとめ 】

昭和6071日より老健法による子宮癌施設検診が行われ以下の成績を得た。

1. 昭和607月より、平成2812月までの266ヶ月間の受診者総数は173,770名であった。受診者数の年次推移を見ると、昭和60年の886名から平成3年の5,259名と年々増加しているが、以後は3,9004,500名前後で推移している。平成18年以降は29才以下及び30才台の受診者の急増で、206,233名、229,240名と増加した。最近6年間は、9000名前後の受診者数で推移している。
2. 受診者の年齢分布は29才以下20982(12.1%)30才代58988(33.9%)40才代43473(25.0%)50才代27355(15.7%)60才代15220(8.8%)70才以上7752(4.5%)であった。最近若年者の性感染症と子宮頚癌発生の増加が問題視されているので、平成18年から29才以下の受診者の増加がみられるのは歓迎すべきことである。
3. 平成24年以降、べセスダ分類が使われるようになり、細胞診成績の表記がわかりにくなったが、受診者総数173770名中、クラスI、クラスU、NILMの正常者が169986名(97.8%)、要精検者3567名(2.1%)、診断不適も106(0.06%)に見られた。
4. 要精検者数は全体で3567名(2.1%)であった。年別では平成2年の3.04%が最も高く、平成7年の1.37%が最も低かった。年齢別の要精検率は、29才以下は3.08%,30才代ならびに40才代では2%台で大差はないが、50才〜60才代では1%台と低く、70才以上では1.94%と、やや高かった。
5. 受診者総数173770名中、607名の悪性腫瘍が発見された。発見率は0.35%であった。このうち子宮頚癌は562名、その他の悪性腫瘍は45名であった。

6.

発見された子宮頚癌562名の期別分類では上皮内癌・初期浸潤癌で432(76.9%)と多数を占めており、検診の成果がうかがわれる。年齢別期別分類で見れば、30才代219(39.0%)が最も高く、次いで40才代99(17.6%)70才以上55(9.8%)と続いている。
7. 要精検者3567例の追跡調査では、クラスIIIaの中にも123(5.30%)、クラスIIIbの中には86(48.04%)、ASC-USの中にも35名(9.8%)の悪性腫瘍(CIN-3含む)が発見されているので、積極的なFollow-upが必要である。なお、追跡不明者も608名を数えている。その頻度は17.0%であるが、要精検者の追跡調査を確立することは今後の重要な課題である。

以上、老健法による子宮癌施設検診の結果、地域医療に適した集団検診の充実と追跡調査の確立が重要であり、行政と医療従事者の熱意ある対応が望まれる。


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平成080805日作成
平成290924日改定
文責:一瀬 宏(佐世保市医師会員)