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最近は、生理が遅れたら、市販の妊娠判定薬で確認してから来院される方が増えています。
現在のの判定薬は高精度で、妊娠2ヶ月になれば陽性に出ます。
結果も間違うことはほとんど無いようです。しかし、陰性の時は妊娠が無いというわけではありません。無月経が続けば、2〜3週間後に再検査する必要があります。
陽性の時は、ほとんど妊娠に間違いありませんが、正常妊娠とはかぎりませんから早めに産婦人科を受診してください。
また、妊娠週数の計算ですが、通常月経周期が28日の場合、最終月経開始日よりの週数で計算するようになっています。だから、性交後2週間で妊娠2ケ月(妊娠4週)にはいります。
当院に来られた妊娠診断希望の若い女性がこのことを知らず、驚かれることが時々あります。ご注意ください。
生理が遅れたと来院された患者さんに妊娠を告げると、よく「避妊してたのに。」と言われます。よく聞くと・・・・。
- 1) 事後洗浄した
- 性交後、シャワーで流した、ビデで洗った、ビールで洗った、コーラで洗ったなど。しかし、射精直後に精子の一部は子宮内に入って行きます。あまり避妊効果はありません。
- 2) 膣外射精
- よく「中には出さなかった。」と言われますが。男性は、射精の前から少量の精液が流出していると言われます。かなりの確率で避妊に失敗します。
- 3) コンドームを使っていた
- コンドームは、完全に使えばかなり避妊効果が高いものです。しかし、最初は装着せずに挿入して性交し、最後に装着して射精したと言う方がかなりおられます。最初の挿入時から装着してください。
- 4) リング(IUD)を入れていた
- IUDも、ときに妊娠します。これは仕方が無いようです。このため最近はピルの方を勧める医者が増えてきました。
- 5) ピル
- ピルでの避妊失敗は、ほとんどの場合のみ忘れです。確実に服用していれば、ほとんど失敗はありません。
<各避妊法の失敗率>
◎ 1年間の失敗率(妊娠率) (%) 方法 理想的使用 一般的使用 ピル 0.1 5 IUD 2 4 コンドーム 3 14 ペッサリー 6 20 殺精子剤 6 26 オギノ式 5 25 女性避妊手術 0.5 0.5 男性避妊手術 0.1 0.1 避妊せず 86 86
やむをえず妊娠中絶が必要になられた場合、施設により手技や費用など異なりますが、当院では妊娠週数により次の4段階で施行しております。
ダウン症は,21番目の染色体が1本多い染色体異常で,生後に発達遅延などの障害やさまざまな合併症が現れます。母親の年齢が高くなるほどダウン症の赤ちゃんが生まれる確率が高くなります。
<分娩時母体年齢とダウン症の確率>
25歳 1376人に1人
30歳 960人に1人
35歳 424人に1人
40歳 126人に1人
45歳 31人に1人
妊娠中のダウン症の検査は、妊娠16〜17週に羊水検査で行います。しかし、妊娠しているおなかから針をさして、子宮内の羊水を採取するわけですから、この検査のために流産するなどの危険もありえます。
通常は、妊婦様の年齢によって、羊水検査をするかしないか、希望をお聞きしていましたが、実際は若い妊婦様にもダウン症は発生してきました。
そこで、妊婦様の1人1人の個人的確率を検査し、これによって羊水検査をするかしないかの判断材料にしようというのが、トリプルマーカー検査です。
妊娠するとお母さんの血液の中には、いろいろな化学成分(タンパクやホルモンなど)が現れたり、あるいは濃度が変化したりします。おなかの中の赤ちゃんに異常があると濃度が高めになったり低めになったりします。ダウン症の場合は母親の血液中のα-フェトプロテイン(AFP)やエストリオール(uE3)の濃度が低めになり、一方ヒト絨毛性性ゴナドトロピン(hCG)は高めになります。そこでお母さんの血液に含まれるこれら成分の濃度を調べ、それにお母さんの年齢、体重などの情報を加えて、赤ちゃんがダウン症である可能性を計算します。三つの成分を調べることから、トリプルマーカーテストと呼ばれます。
トリプルマーカー検査では、赤ちゃんがダウン症である可能性、すなわち「確率」しか出せません。赤ちゃんが本当に異常を持つかどうかは羊水検査などで確定診断しなければいけません。だから、トリプルマーカー検査は、羊水検査をするかしないかを決めるための検査と理解してください。
トリプルマーカー検査は、妊娠15週にお母さんの血液をとって検査をします。検査の結果はおよそ1週間でわかります。検査料は16,000円(全額自費)です。
昔は、赤ちゃんと2人分食べなさいと勧められ、肥満妊婦が多かったようです。
現在は、8〜10Kg増加を目標にしてくださいと勧めます。分娩前の子宮内は、胎児3200g、胎盤600g、羊水500g、子宮の増加分1000gで合計5300g、あと乳房の増加、体全体の脂肪増加を考慮した数値です。
しかし、この8〜10Kg増加というのも、妊娠前標準体重であった人の場合です。もともとやせている人は10〜15Kg増えるのも良いと思いますが、もともと肥満の人は3〜7Kg増加、超肥満の人は体重増加(-)をめざして下さいと指導しています。
胎児は、母体の体重増加とあまり関係なく大きくなります。
<肥満の害>
- 1) 妊娠中毒症が増える
- 妊娠中で非常に危険な病気です。胎児死亡や母体死亡の原因になります。原因不明ですが肥えた人に多いようです。
- 2) 難産になる
- 骨盤の外に肉や脂肪が付くと、骨盤内側にも肉や脂肪が付き、産道は狭くなります。帝王切開になっても、麻酔が効きにくいし、キズの回復も悪いのです。
- 3) 出血が多くなる
- 分娩後の出血が増え、輸血が必要になる可能性が増えます。
- 4) 胎児の状態が悪くなることがある
- 母体の体重が増えると、母体の腎臓が自分の老廃物の処理でいっぱいになり、胎児の体内に老廃物がたまりやすくなります。
- 5) 母乳も出にくい
- 乳腺組織が脂肪に圧迫されて、発育しにくくなります。
妊娠中、特に異常が無ければ、性交は禁忌ではありません。体位に工夫が必要です。
妊娠中の性交で1つだけ注意していただきたいのは「膣内に射精しない。」ということです。精液の中にはかなり雑菌がおります。雑菌で膣炎を起こすと、破水や早産を起こしやすくなります。また精液の中に子宮収縮を促す物質(プロスタグランディン)が含まれています。だから、膣内射精は早産の誘引になりやすいのです。
妊娠中の性交はコンドームを使用してください。
葉酸というのは、ビタミンB群のなかの一種で水溶性ビタミンです。
最初にほうれん草の中から見つかったのでその名が付けられました。
葉酸は、細胞の分化に不可欠なビタミンです。このため、細胞の分化の盛んな胎児では、特に葉酸が重要です。
受胎前後に十分量の葉酸を摂ることで、二分脊椎(にぶんせきつい)や無脳症などの神経管閉鎖障害のリスクが低減できることが、多くの研究から明らかになってきました。
元来、神経管閉鎖障害は欧米に多く、日本には少ない疾患でした。
それは、日本食の中には比較的葉酸を多く含む物が多かったからです。
しかし近年は、日本でも食事の欧米様式化に伴い、神経管閉鎖障害が増加傾向にあります。
厚生労働省でも、妊娠を希望するすべての女性に、1日400マイクログラムの葉酸を摂ることをすすめております。
通常、日本人の食事の中で足りない栄養素は、カルシウム、鉄分、葉酸、の3つです。
カルシウムは、毎日牛乳を1本飲む事でかなり補えます。
鉄分は、不足すると貧血になりますが、妊娠中は、妊娠後期に貧血があれば、分娩までに鉄剤の飲み薬または注射で貧血を改善するように指導します。
葉酸は、気がけてほうれん草などを食べれば良いのですが、現実はかなり不足ぎみです。
【葉酸を比較的多量含む食物。】・・・・・・キョーリン製薬株式会社パンフレットより
ほうれん草(2株/60g) 126マイクログラム
ブロッコリー(2房/50g) 105マイクログラム
いちご (中5個/75g) 68マイクログラム
オレンジ(中1個/130g) 44マイクログラム
日本かぼちゃ(4cm角2切/60g) 48マイクログラム
これから妊娠を考えている女性、または妊娠初期の女性は、葉酸を含む野菜や果物の摂取を心がけましょう。
< YAHOO ほうれん草レシピ100選 >
葉酸は、錠剤(栄養食品、サプリメント)で摂取するのも、良い方法です。比較的安価で売られております。
また、この葉酸は、ビタミンB6、B12、Cが無いと働きませんから、日頃からバランスのとれた食事を心がけてください。
平成17年8月厚生労働省の薬事・食品衛生審議会乳肉水産食品部会はメカジキやキンメダイなど16種類の魚やクジラ類について「人の健康、特に胎児に影響を及ぼす恐れがある高いレベルの水銀を含んでいる」として、妊婦が食べる際は一定量以下に抑えることが望ましいとする注意事項をまとめた。
【妊婦の魚制限】
妊娠かその可能性がある人が、1回80gとした場合の食べてよい回数。
<2ヶ月に1回まで> バンドウイルカ
<2週間に1回まで> コビレゴンドウ
<週1回まで> キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロ、
エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラ
<週2回まで> キダイ、クロムツ、マカジキ、ユメカサゴ、
ミナミマグロ、ヨシキリザメ、イシイルカ
※ 週に2〜3種類食べる場合は、それぞれの量を2分の1、3分の1に減らす。
日本では、妊娠5ケ月の犬の日以降、腹帯をしめる習慣がありました。腹部の安定を保ち、保温に役立つなどと言われております。しかし当院では「腹帯はしないでください。」と指導しています。
腹部大静脈の圧迫が妊娠中毒症の1つの要因になる、という意見があるからです。四足動物は大静脈圧迫が起こらないので妊娠中毒症は発生しないと言われています。
また、世界中で腹部を圧迫する腹帯のような風習があるのは、日本だけだとも言われます。
腹帯の利点は、突き出た腹部の横揺れを防いで、腰痛予防になることだけだと思います。だから、前回妊娠時妊娠中毒症が出なかった経産婦さんで腰痛が強ければ、腹帯をしても良いかなと思いますが・・・・・。
しかし、産婦人科専門医のなかにも、いろいろ意見がありますので、自分の主治医にご相談ください。
妊婦さんはシートベルトの使用義務から除外されています。しかし、妊婦さんはシートベルトをしないほうが良いというわけではありません。母体が死亡すると胎児も死亡するわけですから。
現在は、妊婦さんもシートベルトを装着するべきだといわれています。
注意点は、@ 正しい姿勢ですわる。A ベルトが子宮にかからないようにする。の2点です。
特に、下の方のベルトはなるべく下の方に置き骨盤を押さえるようにします。それでも子宮にかかりそうな人は、妊婦さん用のシートベルト補助具もあり、インターネットでも販売されています。
http://www.premama.co.jp/PL-shop/vertex/
最近、若い女性の喫煙者が増えています。
だれもがたばこは身体に悪い、妊娠中は特に有害だと言いますが。どのくらい悪いのでしょうか。
20〜29歳女性の喫煙率(%) 平成 元年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 % 8.9 11.9 11.2 9.7 10.7 12.7 16.9 12.8 21.3 19.1 16.0 20.9
<たばこの3大有害成分>
200種類以上も存在するたばこの有害成分のうち、代表的な3つの有害成分は、「ニコチン」「タール」「一酸化炭素」であるといわれています。
「ニコチン」…微量でも猛毒!
二コチンは血管を収縮させて、血液の流れを悪くし動脈硬化を促進させることから、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患にかかりやすくなります。
「タール」…発がん物質が含まれています!
タールには、発がん性物質の代表として有名なベンツピレンを筆頭に、数十種類近くの発がん性物質が含まれています。
「一酸化炭素」…酸素の運搬に障害!
一酸化炭素は、赤血球中のヘモグロビンと結びついて、酸素を運搬する働きを妨害してしまうため、慢性的に脳細胞や全身の細胞に酸素欠乏状態をもたらし、ニコチンの血管収縮作用と重なって心臓を養っている冠状動脈や脳血管の動脈硬化を促進します。
<妊娠と喫煙>
胎児と妊婦は胎盤でつながっています。そのため、妊婦の喫煙によって胎児にも影響がでます。
たばこの中のニコチンの作用により胎盤の血管が収縮し血流障害をおこしたり、一酸化炭素がヘモグロビンと結合して胎児への酸素供給量が少なくなり、胎児は十分に成長できなくなります。
たばこを吸う妊婦から生まれた赤ちゃんは吸わない妊婦の赤ちゃんに比べて、体重が平均200g少なく、低出生体重児が産まれる頻度は約2倍高いといわれています。妊娠中の喫煙は低出生体重児以外にも早産や妊娠合併症などいろいろな異常を起こしやすくなります。
喫煙と早産・低体重児の関係 (鈴木雅洲,1980) 区分 早産(%) 低体重児(%) 非喫煙者 2.8 3.6 妊娠初期のみの喫煙者 4.7 6.1 妊娠中全経過通しての喫煙者 9.2 8.8 妊娠中全経過喫煙で1日16本以上の喫煙者 18.7 16.3
喫煙と胎盤異常 (Meyer, 1977) 胎盤早期剥離 前置胎盤 異常出血 非喫煙妊婦 1.0 1.0 1.0 1日19本までの喫煙妊婦 1.6 1.3 1.2 1日20本以上の喫煙妊婦 1.8 2.0 1.5
<乳児への悪影響 >
母親が吸ったたばこの中のニコチンは母乳に分泌されます。しかも、母乳に分泌されるニコチンの濃度は母親の血液中の濃度より高くなります。
1日20本以上喫煙する母親の母乳を飲んだ新生児がいらいらしたり、よく眠らない、下痢、嘔吐、頻脈など、ニコチン中毒の症状がみられることも報告されています。
また、乳幼児突然死症候群(SIDS)も、喫煙家庭に多いことがわかっています。
<肌への影響>
女性の喫煙は妊娠・出産・育児だけでなく美容にも影響します。
お肌の手入れの基本は血行をよくすることです。
たばこに含まれるニコチンは血管を収縮させ、皮膚の毛細血管の血行を悪くします。その結果、皮膚は慢性の栄養失調となりシミやシワが増えてしまします。その上、喫煙により血液中のビタミンCが破壊されます。ビタミンCはメラニン色素の代謝に関係するので、不足するとシミをつくり肌の色を悪くします。
妊娠したら、たばこは止めてください。赤ちゃんに明らかに害があるのですから。
しかし、永久禁煙と考えたら、けっこう大変なのです。そこで「まずは、この子が生まれるまで休煙しょう。お産がすんだら、スパスパ吸うぞ」と休煙開始されたらいかがでしょうか。お産がすむと、赤ちゃんはかわいいので、とてもたばこなど吸えなくなり、休煙が続く可能性が高くなります。
院長も、昔はロングピース30本/日の喫煙者でした。現在休煙中。「70歳すぎたらたばこを吸うぞ。」と思っています。
帝王切開の次の分娩を帝王切開するか、下から産んでいただく(経膣分娩)か、医師によって考え方にかなり差があります。
経膣分娩をした場合、何が問題かというと、子宮に帝王切開の時のキズがあるので、強い陣痛が来たとき、キズの所から子宮が破れる(子宮破裂)ことがあるからです。
子宮が破裂すると、場合により胎児死亡、母体死亡も起り得ます。破裂した子宮は摘出しなければならないこともあります。また大量輸血が必要な場合もあり、輸血後肝炎の心配も出てきます。
前回帝王切開した人が、次の分娩を経膣分娩していると、200人に1人子宮破裂が起ると言われます。
帝王切開していない人でも子宮破裂はありますが、1万人に1人位です。だから、前回帝王切開の人は帝王切開していない人の50倍危険があるのです。しかしまた、200分の1と言うのはめったに無い確率ですから、経膣分娩をしても良いのではないかとの意見もあるのです。
●●前回帝王切開の妊婦さんが経膣分娩をするための条件 ●●
(1) 前回の帝王切開が、骨盤位とか胎児の心拍数低下など胎児側に原因があった場合、今回そのような要因が無ければ、経膣分娩が可能かもわかりません。しかし子宮口が開かなかったとか、微弱陣痛で進まなかったなど母体側に原因が有ったのなら、今回帝王切開したほうが良いでしょう。 (2) 前回の帝王切開が自院で行なわれた、または帝王切開の方法、即ち、子宮の切り方、縫合糸の種類、縫い方などの具体的情報が明らかで、帝王切開後の経過も異常無かった場合。 (3) 今回の分娩が、予定日圏内に自然に陣痛が開始し、自然に分娩が進行した場合。 (4) 本人・家族が経膣分娩を希望し、子宮破裂などの危険性を了解している場合。
しかし全国的にも、この10年で前回帝王切開の妊婦さんは今回も帝王切開と決めている施設が増加しているのを感じています。
私はまあまあ、前回帝王切開の妊婦さんを経膣分娩していただいてはおりますが、いろいろ説明すると帝王切開を希望する家族が増えてきました。
本人・家族から「帝王切開か経膣分娩か、先生の判断におまかせします」と言われたら、多くの産婦人科医は迷わず帝王切開します。帝王切開したほうが医者にとっては何倍も楽で安心だからです。
「先生、私はぜひ経膣分娩をしたいのです、お願いします」と言われたら、それでは経膣分娩を検討しましょうという話になります。